「ドレミ」だけでは、音楽は語れません

「ドレミファソラシド」は音楽の「文字」に過ぎません。

文字を読めても、それだけでは文章を理解できないのと同じです。

音符を読めても、その音楽が何を語っているのか、作曲家が何を意図しているのか理解できるわけではありません。

特にクラシック音楽では、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンといった大作曲家は、深い和声の理解に基づいて作曲していました。その「言語」を理解せずに演奏することは、意味も分からず外国語の文章を読み上げるようなものです。

コード指導が難しいと感じるのはなぜ？

現代のピアノ教育では、コード（和音）指導は調性が複雑になり始める「中級以降」「大人になってから」と後回しにされがちです。その理由として：

- 「子供には理解できない」という思い込み

- 教師自身がコードを体系的に学んでこなかった

- 初級者向けの適切な指導法や教材がない

- 「基礎が先、理論は後」という従来の考え方

しかし、音楽の本質は音と音の関係性にあります。それを理解せずに演奏技術だけを磨いても、真の音楽表現には至りません。

子供にこそ必要な「音楽の言語」教育

新しい研究によれば、子供の脳は言語学習に最適化されています。7歳までの子供は、新しい言語体系を自然に吸収する驚くべき能力を持っています。

これはつまり、コード（和声）という音楽の言語も、小さい頃から学ぶべきだということです。

「難しいから後で」と先延ばしにすると、逆に習得が難しくなり、いつまでも「音符は読めるけど音楽が理解できない」演奏者を生み出してしまいます。

音楽の３大要素：リズム・メロディー・ハーモニー。リズム打ちや視唱などソルフェージュのテキストはたくさんありますが、ハーモニーに関しては体系的に教えてもらったことはない方も多いのでは？だから指導法にも悩みますね。

事実、ブルグミュラー２５番でさえ、和声分析・コード分析できない、苦手という先生が多いのが現実です。

あるピアノコンクールで、海外からの審査員の先生から「〜の曲のあのフレーズのコードの響きがよくなかった」と講評され、担当の先生は理解できなかったという話がありました。

曲の分析ができない、どんな和声（コード）が使われているかわからずに、感覚的に表現を指導するしかできない日本人のピアノの先生が多いことは、とても恥ずかしいことだと同席した方の感想でした。

でも和声法は勉強はしたけれど難しくて挫折したという方も少なくないでしょう。しかし「コード」なら簡単に分析できることを多くのクラシックのピアノの先生はご存知ありません。ジャズの楽譜をアメリカから出版している作曲家だからこそ自信を持って言えます。「コード」なら難しくない。子供でも大丈夫と。

必要性を感じた今こそ、生徒さんと一緒に学ぶ時です。遅くはありません。

しかしこのチャンスを逃すと、2度と出会わないかもしれません。和音やコードを体系的に学ぶのはポップスやジャズ、或いは作曲の領域だからと思っていませんか？

先生自身のためだけでなく、将来のある生徒さんのためにも、今がそのチャンスです。

子供さんの可能性をあなたのピアノレッスンで開花させてあげられる最後のチャンスかもしれません。